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佐野 亜裕美(ドラマプロデューサー)/ハイバイ『夫婦』

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今自分が見ているものに対する感情が脳の中で言語化されるより先に、身体の方が勝手に反応してしまうという経験を初めてしたのが「夫婦」の観劇中であった。
冒頭まだ10分ぐらい、父親が家族の問題を全て無視してテレビに向かって一心不乱に指揮し続けるシーンを観ている時、気付かぬうちに涙が流れていた。ウルッではない、滂沱だ。驚いた。何か直接的にリンクする経験があったわけではない。私の父は不器用な人ではあったが、劇中に登場するような恐ろしい父親ではなかった。それでも、幼い頃うっすらと感じていた父親に対する畏怖の念や圧倒的なわかりあえなさ、普段はまるで意識することのない、身体の奥底に眠る深い、そうした記憶や感情を呼び覚ます力がこの作品にはあった。
恐ろしい作品だ。それでも、それだからこそ、愛さずにはいられない。
 
分野:演劇
推薦者:佐野 亜裕美(ドラマプロデューサー)
作品名:ハイバイ『夫婦』
 
撮影:引地信彦