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深田 晃司(映画監督)/青年団『S高原から』

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フィクションで「死」を描くことは難しい。どんなに荘厳に描かれた死の場面においても俳優は決して死んではいないことは誰もが知っているからだ。
高原のサナトリウムのロビーを舞台にそこを行き交う人々の姿を描いた劇団青年団の代表作のひとつである『S高原から』。2005年にこまばアゴラ劇場での公演を見て衝撃を受けた。舞台上には死ぬはずのない俳優がただ静かに横たわっているに過ぎないにも関わらず、そこにはっきりと死の影が見えたからだ。舞台から客席へと死が侵食してくるのを感じた。不可視のものを不可視なままに鑑賞者の想像力の中に描き出す青年団の会話劇の凄みがそこにあった。目に見えない「心」を軽視することなく掬い取るその手法は、カメラに映らない不可視のものを軽視し表層的な運動の快楽を重視する日本映画のある種の傾向に限界を感じていた当時の自分にとって大きな可能性のように思え、『S高原から』観劇後すぐに青年団の演出部に応募して入団を決めた。今でも何度でも見返したくなる舞台。

 

分野:演劇
推薦者:深田 晃司(映画監督)
作品名:劇団青年団『S高原から』