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権利のこと
                 

収録と配信のススメ

権利のこと

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EPAD事業では、各団体が持つ公演映像を収集・デジタルアーカイブ化・配信可能化のための権利処理をすることで、舞台芸術を集積し、新たな価値の発掘に取り組みました。
携帯電話などのデバイスが登場し、5Gが開通したことで、テレビ放送やDVDに加え、動画配信での観劇ニーズは高まることが予想されます。また、劇場の入場制限を補填する経済的な意味でも、配信収益の重要度は増していく傾向があります。
私たちがEPAD事業で1,283本の映像と向き合う中、どのように収録すれば付加価値を高めた配信につながるのか、考えてきました。そこで得られた知識をまとめましたので、ポイント毎にご紹介いたします。
今後、みなさまが舞台作品を収録・配信する際のヒントとなり、動画鑑賞を入り口に生の観劇体験をしたいと感じる人がひとりでも増えることを願っています。

ポイント① 撮影前に

権利

舞台作品の上演と配信では、当該作品の権利者から取得する許諾の内容や、許諾を取得しなければならない権利者が変わります。たとえば、楽曲の原盤権利者については、上演時には必ずしも許諾を得る必要はありませんが、配信を行う場合には配信の許諾を得る必要があります。また、ある原作者から「上演」の許諾しか得ずに制作した作品を、別途配信もしたいと考えた場合には、改めて当該原作者から今度は「配信」の許諾を得る必要があります(もちろん原作者によっては「上演」は許可するが、「配信」は許可しないということや、許諾条件が大きく異なるということもあり得ますので、この点は注意が必要です。)。
また、音楽著作権に関しては、JASRACやNexTone等の管理楽曲のうち国内楽曲であれば、通常そうした著作権管理団体への申請のみで手続きは足りますが、海外の楽曲を使っている場合には、別途権利者との指値での交渉が必要となってきますので、その許諾が取れるか、また予算としてどの程度かけられるのかという見込みを立てましょう。
詳しくは「舞台作品の配信権利処理の注意ポイント」をご参照ください。

 

契約

上記のとおり上演と配信では、当該作品の権利者から取得する許諾の内容や、許諾を得なければならない権利者が変わる場合があります。許諾を得る必要がある権利者については、作品ごとに変わり得るものではありますが、著作権法上、許諾を得なければならない権利者となり得るものとしては「原作者」「劇作家・脚本家」「演出家」「振付家」「舞台美術家」「照明家」「音響家」「衣裳デザイナー」「音楽著作権者」「音楽原盤権者(既存のCDなどを使った場合)」「実演家」等です。
配信を見込んでいる場合は、上演のみならず配信についてもきちんと書面等で許諾を得ておくこと(契約を交わすこと)を推奨します。
詳しくは「舞台作品の配信権利処理の注意ポイント」をご参照ください。

 

予算

あらかじめ上限予算を決めておきましょう。配信・DVD販売・放送など収入とのバランスは適正かどうか、それぞれの目的に見合った付加価値をどうつけるかを考える必要があります。
何回収録するのか、カメラの種類・台数・撮影スタッフの人数・収音スタッフの人数・納期によって収録費は大きく変動します。

 

スケジュール

収録日をいつにするか、公開日と納品日から計画を立てます。
予算にも関係しますが、編集チェック・修正の予定も想定しましょう。最終のMAが終わってからの修正は費用が無駄になりますので、余裕を持って設定することをお勧めします。

 

配信媒体の選定

動画の配信先によって、納品ファイル形式、画像の解像度、撮影条件が変わってきます。4K、8K、3カメ以上、音のクオリティーなど、完成した動画をどう活用するのか想定しておきましょう。
ライブ配信を行う場合は会場のインターネット環境の確認も必要です。

ポイント② 各セクションとの連携

収録を行うには、他セクションのスタッフとの連携がとても大切です。各ポジションとの基本的なチェックポイントをご紹介します。

 

制作

収録を企画・主導するのは多くの場合はプロデューサーと制作だと考えられます。放送用収録の場合、放送会社が収録をする場合と主催者が収録を行って、販売する場合があります。収録・放送or配信までの連携を行うために、各セクションとの密なコミュニケーションが必要です。
指定席で販売する場合には、チケット売り出し前に撮影スペースを確保する必要があります。美術プランを収録担当に共有し、カメラの設置位置の希望と減らせる客席数との調整、カメラの高さでお客様は舞台が見えにくい状況にならないかなど気を配りましょう。
当日はもちろんのこと、チケット販売前に収録があることを事前にお伝えする方がマナーにかなっています。囲み舞台の収録の場合には事前にお客様から映像に写りこむ可能性及び当該映像の配信・DVD販売・放送等による利用について許諾を得ておくことや、そうでない場合にお客様の顔が映像に残る場合にはぼかしを入れる必要がある場合もあります(なお、こうした肖像権に関する判断においては、デジタルアーカイブ学会策定の「肖像権ガイドライン(案)※」 も一定のご参考になるでしょう。)。
収録前に上映台本・ランスルーの映像を送るのは最低限として、編集担当による稽古見学、事前打ち合わせを行った方がスムーズです。
撮影クルーによる劇場下見、舞台監督や劇場との打ち合わせの設定、当日の控え室や駐車場の準備もあります。狭い劇場の場合、スタッフが増えることは各所に大きな影響がでてきますので、控え場の用意や周知に気を配りましょう。

 

舞台監督

撮影スペースはあらかじめ、劇場と舞台監督とに共有しておく必要があります。カメラ設置箇所は避難用通路を塞いでいないか、カメラが俳優の視界に入って演技の妨げになっていないか、暗転のタイミングをカメラマンが把握していてモニター画面を暗転時に隠してくれるかなどを事前に確認しましょう。また、機材への影響も考えなくてはなりません。 例えば、スピーカー前にカメラを設置した場合には、音量によって機材が揺れるかもしれません。キャットウォークにカメラを設置することで舞台上に設置した仕掛けに影響が出ないか、などカメラ位置が作品進行に干渉しないかが重要です。

 

音声

収音は映像収録とは別の業者に依頼することができます。台詞等だけではなく、観客や環境音があると、映像に立体感を持たせることができるため、素材として音は非常に重要です。
劇場の大きさによっては収録用に俳優にピンマイクをつけるかどうかも判断すべき点です。
マイク使用時は音響さんと連携し、音響卓からラインをもらう必要があります。会場内のマイク設定位置、出演者の声をとるライン入力は大切になります。例えば、右、左、中央、上とマイクの音源は別々で保存し、ミックスの時にモノラル変換をしないことで、後々の使い方の幅が広がる場合もあります。

 

照明

舞台上の明かりは暗転シーンから、力強い光源までシーンによって様々です。照明さんと連携し「ホワイトバランス&シーンチェック」を本番前に行うことがお勧めです。最低限、一番明るいシーンと暗いシーンの照明を確認し、全てのシーンで舞台の映像がしっかりと収録できるか、事前に確認をすると良いでしょう。
暗転中に芝居が続いている場合、それをどのように編集するか、また暗い場面で収録用に光量を足してもらうなど演出家と照明プランナーと相談すると知恵がもらえる場合もあります。

ポイント③ 編集について

編集の手順としては、大きく分けて2種類。①撮影現場でスイッチャーを使用し、撮影しつつ編集も進める方法。②撮影した映像データを、編集で一気にピックアップしていく方法。どちらにしてもディレクターの作品への理解がキーになります。
エンディングロールのクレジットやロゴの提供は主催者側の役割です。
ディレクターには稽古見学のほか、通し映像や台本のお渡し、劇場下見など、可能な下準備を連携しておくと、作品の魅力を一層伝えてくれる工夫をしてくれると思います。

ポイント④ 撮影に関する当日までの流れ

以下は撮影者との大まかな進行スケジュールです

公演の2か月前:撮影業者への依頼・見積・発注、スケジュール調整

公演の数週間前:台本お渡し、通し映像送付

公演日:本番撮影

公演後1か月程度:初校提出、もしくは大まかな編集済み映像の確認

完成(納品)

こんなことがあったよ

上下に1台ずつカメラを設置して、撮影スタッフが一人しかいなかった。片方のカメラの録画スイッチを入れた後、制作が通路を塞いで観客を入れてしまったため片方のカメラの所に戻れなくなってしまった。開演したあと最前列、観客の前をスタッフが走って通ることに。

スイッチングの指示の音量が大きく、撮影スタッフのイヤホンを通してお客さんに聞こえている。

撮影スタッフが白いTシャツを着て観劇の妨げに。普通は金髪のスタッフもニット帽をかぶったりして気を使っています。

イラスト:あさののい