
KYOTO EXPERIMENT/田中奈緒子『STILL LIVES』
分野:舞踊
上演団体:KYOTO EXPERIMENT
作品名:田中奈緒子『STILL LIVES』
上演年:2018
作品概要:美術家としてのバックグラウンドから出発し,インスタレーション・パフォーマンスという形式によって独自の領域を拓く田中奈緒子。2011年から取り組む「影の三部作」最終章の『Unverinnerlicht _ 内在しない光』を昨年のKYOTO EXPERIMENTで上演,光と影による静謐で強靭な表現で観客をひきこんだ。同じくドイツを拠点とするパフォーマー/コレオグラファーの芝原淑恵をコラボレーターに迎えた最新作『STILL LIVES』は,そのタイトルにふたつの意味を隠している。ひとつは絵画の様式である「静物画」,もうひとつは「It still lives.」——まだ,生きている。
場の個性が大きく作用する本作。今回上演されるのは,日本の近代化にとって象徴的な存在でもある世界遺産・二条城だ。さまざまな時間を経てきたこの空間に,田中は作品を通じて対話を持ちかける。プラスチックの膜は波のようにさざめき,時計のように巡る光が影を投げ,運びこまれる家具はどこかが欠け,あるいは歪んでいる。田中は,理解のための起承転結を差し出すのではない。見るものひとりひとりの内部に微細な知覚の物語が立ち上がるのを,待っているのだ。
【田中奈緒子】
1975年東京生まれ。美術家(インスタレーション/パフォーマンス)。
ドイツ,ベルリン在住。
1999年に東京芸術大学大学院美術研究科修士過程を修了後,ユニオン造形文化財団在外研修員としてドイツ・デュッセルドルフ芸術アカデミーへ留学。2001−2009年,同地でコレオグラファーであるモルガン・ナルディと共にアーティスト・ユニット「ルディカ」として活動し,造形芸術と舞台芸術が深く融合したパフォーマンスやインスタレーション作品を多数発表。2010年,コンセプトから舞台造形,演出,音響,パフォーマンスまで全て一人で担当する制作スタイルでソロ活動を始め,共同制作/分業が一般的である舞台芸術の分野において,作家自身がパフォーマーとしてインスタレーション空間を変容させていく独特の表現形態で注目を集める。2011年より,光と影という単純な素材を元手に巨大な幻想的世界を作り出し,「見ること」「見えること」を拡張し省察する「影の3部作」を展開,欧州各国の国際的舞台芸術フェスティバルにて公演。3部作第1部である『Die Scheinwerferin (光を投げる女)』では,「インパルスタンツ(オーストリア/ウィーン)」,「チューリヒ・シアター・スペクタクル」等にて受賞。また,第2部となる『Absolute Helligkeit (絶対光度/絶対等級)』(12年制作/発表)は「大地の芸術祭/越後妻有トリエンナーレ2015」,第3部となる『Unverinnerlicht(内在しない光)』(15年制作/発表)はKYOTO EXPERIMENT 2017にて上演。舞台作品と並行し,場の持つ気配や背景を強く取り込んだインスタレーション作品も展開する。
ソロ活動のほか,ドイツ在住の音楽家オヴァル/マルクス・ポップ とのコラボレーションによる視覚音響パフォーマンスや,フランスの音楽家コリーン/セシル・ショットのミュージックビデオ制作など,活動の幅は広い。
Japan Digital Theater Archives(JDTA)掲載